Chedworth

Chedworth, Roman Villa (2000年3月26日撮影)

コッツウォルズの北にChedworthという村があり、ここにローマ人の築いた豪邸の遺跡が残っています。

現在は、遺跡として残っているだけで建物自体はありませんが、遺跡の中心に上の写真のような博物館と、下の写真のようにモザイクのタイルやローマ風呂の跡を保護する目的の建物が建っています。

紀元後43年にクラウディウス帝がイギリスに攻め込み、ローマ帝国のブリタニアを築きます。 初期のテリトリーは、現在のコッツウォルズの北西グロスター一帯であったと思われ、コッツウォルズにもサイレンセスターを始め、多くのローマ帝国の軍事基地が置かれました。

このChedworthは、1864年ころに狩りでウサギを追って、この谷に迷い込んだ人が、数多くのモザイクの破片を見つけたことで発見されました。 その後、この一帯にエルドン卿James Farrerが自費を投じ、発掘と保護をしたものです。

 

Chedworth, Roman Villa (2000年3月26日撮影)

このローマ人の豪邸跡は、紀元後2世紀ころに作られたものですが、その後200年に渡ってローマ人勢力が衰退するまで何度となく増改築を行った後が見られます。

上の写真は、ダイニングルーム跡でモザイク模様の床がきれいに保存されています。 床の隅からレンガの壁に黒いしみが残っていますがこれはこの床の下が下の写真のように、高床式になっており、この床の下には温泉を沸かした熱風と煙を暖房のために通すようになっていました。 この煙が床の継ぎ目から出て黒いしみを残したものです。

紀元後200年くらいに、すでに全館床暖房温泉サウナつきの家があったのですから、驚くべきローマ人の建築技術です。

Chedworth, Roman Villa (2000年3月26日撮影)

この辺り一帯は、コッツウォルズの中でも山奥深いところにあり、コルン川の削った南向きの山の谷にあります。

南に向いているとはいえども、谷に囲まれているため、朝夕の日光の照射時間は限られてしまいます。 おそらくこの場所に、これほど大きな住居を構えたのは、東西にある大きな山の尾根で西風を避けられることと、豊富な石材、そして下の写真にあるように、井戸水が豊富にあったためと言われています。

Warter Shrine (2000年3月26日撮影)

清潔好きなローマ人になくてはならない風呂の遺跡も、この井戸のすぐ横の場所で発見されています。

この井戸跡は、山から流れ出る地下水をためるようなもので、8角形の石のプールになっています。

ローマ人は水を聖なるものとして崇拝しており、また、このプールの周りに、石柱の跡があることから、この場所は、神社のように屋根があって、神聖な場所だったものと思われます。 

今でも池の水に幸運を願い、コインを投げ入れる風習が残っていますが、これは決して最近になって誰かが考えたことではなく、ローマ帝国の昔にさかのぼる風習が、2000年近く経った今も脈々と現代の人間の文化の中にも流れているものなのでしょう。

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